学生時代の今こそ企業を見る目を養おう

マンションのベランダに鳩がやってきて困っていました。ミライ企業のなかには鳩対策を専門に扱っている企業がありますが、その会社の所在地と、私の住む場所は県をまたいでいます。社長に相談をしたところ、「いいですよ」と二つ返事。出張代金を取ることもなく早急に若手社員がネットを張りにやってきてくれました。

仕事を終えて、お茶を飲みながら話していたら、彼はこんなことを言いました。

「ボク、学生時代、したいことがわからなかったんです。わからないけれど就活しないといけないし、企業研究をして、その会社に合いそうな志望動機を毎回作って、でも本心じゃないから面接で思うように話せない。それを繰り返してたんですよね。でも、説明会で今の社長の話を聴いたとき、この人のもとで働きたいって思ったんです。『決めました、ボク、ここで働きます』って思わず言ってしまって、気がついたら入社してたんです」

私の専門は、組織にいかに経営理念を浸透させるのか、それを探るため20年近く、企業に入り込み調査を続けています。

仕事も覚束ない若手が理念を理解するのはたやすいことではありません。ではどうやって?実は憧れの上司や先輩を観察することで、理念に沿った働き方を学んでいくということがわかりました。

これは何も理念の理解だけに留まるものではありません。働くとき、上司や先輩、同僚といった人間関係は満足要因になります。「あの人のようになりたい」。そんな想いを抱いて仕事をするのと、「転職をしてやる」とソトを向いているのとでは、モチベーションも生産性も変わります。

先の事例のように、何がしたいのかわからない人は潜在的に多くいるはずです。そんなときは、ムリにやりたいことを見つけようとせずに、誰かのために頑張りたいと思えるような、リスペクトできる人がいそうな職場を探すというのはどうでしょう。それは理念的(理想的)な働き方につながっていく可能性も秘めています。

じゃあどうすれば学生時代から、そんな人を見つけることができるのでしょうか。そういう人は、まず企業を見る目を養う努力をすることです。言葉を換えれば、優秀な企業や経営者に数多く触れる機会を積極的に作り出してください。

そこで、ご紹介したいのがミライ企業プロジェクト(略してミラプロ)です。ミライ企業と学生の架け橋になることを生きがいにしているミラプロは、さまざまなイベントやインターンシップを行っています。こちらのスタッフ、めちゃくちゃ面倒見がよくて、こんなことまでしてくれるんですかというようなことを、いとわずにやってくれます。その対応を見るだけでも、人って悪くないな、誰かのためって尊いな、働くって甲斐のあることだな、そんな前向きな気持ちが生まれるはずです。

そして、ここで引き合わせてもらえるミライ企業。一言で言うなら、「伸びしろのある将来有望な企業」という感じでしょうか。アツい(ときとしてアツすぎる)想いを持った経営者や、いい人過ぎる上司、親身になって相談に乗ってくれる先輩、そんな人々が不思議なことに集まっています。で、結構、メディアに取り上げられるような社会性の高い活動をしていたり、この商品ってこの会社が作ってたのかと気づかされたり、経営者がこっそり有名だったりするから、二度驚きます。

学生時代にそういう人々と多く接触する機会をもてば、おのずと何が優良と言えるのかという判断基準ができあがっていくはずです。もちろん人を見る目も向上します。やりたいことが見つからないアナタ。勇気を出して、ミライ企業の「人」に会いに来ませんか。

Writer

帝塚山大学 経済経営学部 教授

田中 雅子先生

経済経営研究所所長、ミライ企業プロジェクトオブザーバー、日本マネジメント学会常任理事・関西部会会長、同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。専門は経営組織論。主著に『経営理念浸透のメカニズム』(中央経済社、2016年)、『ミッションマネジメントの理論と実践』(中央経済社、2006年)がある。

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