2020年以降、コロナ禍でオンラインを活用した授業が増えました。当初は、オンライン化への早急の対応が求められ、技術面や身体への負担、あるいは心理的に負担の大きかった方が多かったことと思います。私は大学で学生たちの様子を見ていると、コロナ禍によるオンライン化の進展による影響は、マイナス面よりもプラス面のほうが多いのではないかと感じることがあります。

例えば、入学当初はパソコンのスキルがそこまで高くない学生でも、いまではオンラインミーティングを活用したグループワークを普通にこなしています。オンラインでのプレゼンテーションも普通にこなしています。もちろん、多少の個人差はありますが、大学で教鞭をとっている立場から見ても、学生達のICTリテラシーは驚くほどに高まっていると感じます。
一方で、オンライン化の問題点も指摘されています。例えば、大学に入学したばかりの学生たちが、友人をつくったり、先輩たちと交流する機会をなかなか得られずに、大学生活において孤独に悩むということがありました。私も、学会活動などの研究活動をオンラインで参加する機会が増えましたが、新しい人間関係を構築することの難しさを痛感しました。

感染症収束に向けた確かな解決策がなかなか見いだせないなかで、人々は工夫を凝らし、「なんとかコロナ前の状態に戻そう」「元に戻そう」と言います。私はそれに疑問を感じています。「元に戻すのか?」と。

幸か不幸か、コロナをきっかけに、私たちの生活や仕事は大きく変わりました。学生にとっては「学び方」が大きく変わりました。社会人にとっては「働き方」が大きく変わりました。しかし、それは悪いことばかりだったでしょうか?私はそうではないと思います。先に示した通り、「オンラインのみ」によるマイナス面はありました。しかし、プラス面も多かったのではないでしょうか。

ヒトと出会い、体感し、目と目を合わせ、心を通わせることは、実際に身体を動かしヒトと出会うことに勝るものはないでしょう。しかし、ICTスキルは、これからの未来を担っていく彼ら・彼女らにとって、必要不可欠なスキルになっていくことと思います。しかもICTスキルは陳腐化が早いので、常にアップデートし続けなくてはなりません。

今後はどちらかを追求するのではなく、これらの融合・両立が求められると思います。つまり、「コロナ前に戻す」のではなく、新しい形として「コロナ後に進む」ことのほうが重要であると感じています。
企業選びでも同じです。過去の成功体験にすがる企業ではなく、新しい世界に進む企業のほうが魅力的に感じませんか?働き方を柔軟にシフトしていく企業のほうが、生き生きと働く人が多い印象がありませんか?

さて、みなさんがこれから関わりたい企業はどのような企業でしょうか?あなたの重視する価値は、既にあなたの心の中にあるはずです。

Writer

武庫川女子大学経営学部講師 博士(経営学)

山下 紗矢佳先生

専門は中小企業
地域振興、中小企業における女性活躍、中小企業における採用などを最近の研究テーマとする。兵庫県下を中心に、行政、経済団体、産学連携等の社会貢献活動に取り組む。
日本中小企業学会事務局長、兵庫県中小企業家同友会アドック神戸アドバイザー、ひょうご経済成長戦略策定会議委員、大阪府向上支援評価審議会委員、全国中小企業団体中央会官公需共同受注促進事業委員会委員などを歴任。

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