東海バネ工業株式会社の桶本 耕平です。生産グループ全体のマネージャーとして、社員が働きやすく力を発揮できる仕組みを考えています。自分なりの戦略を模索する日々ですが、かつては悩みや苦い経験がありました。
今、前向きに仕事と向き合えているのは、これまでの経験を教訓や糧にしてきたからだと思います。ミラプロは、学生も社会人も対等に対話ができる貴重な場です。今回は、僕自身が足踏みし、悶々とした日々を振り返りながら、経験がどのように自分を支え、「自分で考えて動く力」へとつながったのかについてまとめていきたいと思います。
高い技術力で、難題に挑む会社
東海バネの経営理念は「単品のバネでお困りの方々のお役に立つ」です。市場の数パーセントというニッチな「単品・オーダーメイド」に特化し、平均受注ロット5個以下の完全受注生産を行っています。他社が断るような難題にも応えられるのが強みです。
東京スカイツリー最上部の制振装置用の大型コイルバネや、H3ロケットにも、弊社の製品が採用されています。約10年にわたって開発したコイルバネは、2025年、H3ロケットの第2段エンジンの切り離し成功に貢献しました。
お客さまは大企業に限りません。旧車のレストアや楽器の弾き心地の調整など、古い物を大切にする方やこだわりのある個人の方のお悩みにもお応えしています。
こうした高い技術力は、年間約90回の技術講義や、難易度の高い社内技能検定への挑戦を通じて、一人ひとりが技を磨き続けてきた成果です。その証に、優良ばね製造技能者認定表彰制度(一般社団法人 日本ばね工業会)の最上位「プラチナ賞」を受賞した社員が多数在籍しています。
また、社員同士が教え合う「共育」の文化や、人材育成の拠点施設「啓匠館(けいしょうかん)」があり、技術だけでなく職人としての誇りも育んでいます。

豊岡の工場からミラプロに参画した理由と効果
人材育成に年間一人当たり10万円以上の教育費用を投じていますが、社内だけでは学びきれないこともあります。ものづくりの進歩のために、外に出なければ得られない見識や経験を求め、ミラプロに参画しました。
先代社長が「人を大切にする経営学会」でご一緒した佐々木 研さん(CH)からご紹介いただき、2023年にまず僕が出向きました。私たちが求めるニーズと合致し、僕自身にも大きな気づきがありました。それから、毎年4名ほどの若手社員を連れて、参加しています。
ミラプロに参画した効果はとても大きく、明らかに彼らの成長を感じます。例えば、社内のプロジェクトリーダーに立候補したり、進んで自分の意見を言えるようになったりと良い変化が起きました。
ミラプロは、誰の意見も否定せず、安心して対話できる場なので、参加するうちに堂々と発言できる力が身についたようです。
マネジメントの考え方の原体験
僕は決まったやり方に縛られず、状況に応じて柔軟に対応するタイプです。その原点は、子どもの頃にあるかもしれません。
児童数の少ない小学校だったため、野球もサッカーも一般的なルールを適用した場合、試合が成り立ちません。少人数でも楽しめるように、自分たちでルールを考えました。その経験が、今の「状況に応じて仕組みを設計する」という考え方の原点かもしれません。
東海バネには、高校を卒業した2002年に入社しました。配属されたグループで勤務して少し経った頃、周囲から認められず、別のグループに異動になった苦い思い出があります。
ただ、それが転機になりました。異動先で今の専務と出会い、朝から夜遅くまで働く姿を見て「働くってこんな大変なんや」と厳しさを実感。20代は上司(現専務)の元で、精一杯働きました。
「僕と同世代の大学生は夏休み中か」などと、仕事の忙しさにモヤモヤした時期もありました。でも、2013年から生産グループの一部門を運営するリーダーになり、2026年からはマネージャーとして生産グループ全体を管理しています。
苦労のステップが年代とともに変わったように思います。20代は、忙しさと時間の管理に苦労し、リーダーとなった30代前半は人を動かす難しさを痛感しました。上司と部下の板挟みになり、どうすればいいか戸惑う毎日でした。それでも、必死に向き合い続けた過程が評価され、少しずつ自信につながっていきました。
過程だけでなく結果も重視され、数字を求められる立場ですが、時代のニーズに合わせて管理職も変わらねばなりません。限られた勤務時間の中で、社員に対してどうやって平等にチャンスを与えていくかが、現在の一番の悩みですね。
昔ながらのやり方を尊重しながらも、時代に合わない働き方を見直す。ハイブリッドな視点で、リーダー像を模索しています。
若手社員に伝えたい「自立して考える力」
僕はものづくりよりも、適材適所に人材を配置することが得意です。働く中で「人に頼らないと、できないことがある」と知ったので、その人の特性が活かせる配置を考えるようになりました。
一人のスーパースターのおかげではなく、支える人たちがいてこそチームは成果が出せます。そこで「納期」「品質」「設備」などの小集団を編成することにしました。若手社員をキャプテンに据え、全員に何かしらの役割を担ってもらっています。
チームを信頼することを体感して、全員が活躍できる場を広げたい。そして、自分で考え、動ける人になってほしいんです。そのためには、選択肢がたくさんあることを知り、失敗してもいいから、自分で選ぶことが重要です。
答えを教わることは簡単ですが、それと同じことをしていても変化は起きません。結果を出すためには、時にはリスクを受け入れ、挑戦する勇気も必要です。ミラプロや社外のセミナーなどで、さまざまな視野や価値観に触れて、可能性を広げてほしいと思っています。
弊社では年3回、社長とリーダーと社員の三者面談を行っています。面談の前には、社員と僕とで話し合いをします。本人が気づいていない強みを言語化できれば、社長の前でも自信を持ってアピールできますから。
経験を重ね、どこでも通用する人間に
ミラプロの学生たちの勇気と行動力は、本当に素晴らしい。多くの経営者や社会人がいる中で、学生が企画を立ち上げて実行しています。大人でもなかなかできませんよ。
なかには中学生も参加していて、その発想力にも驚かされます。弊社の若手社員も、10代のパワーに刺激を受けているようです。僕たち大人は、学生たちの勇気や行動力に応えなければなりません。
就職後に、一社に勤め続ける道も、経験を糧に新たな別の場所へと羽ばたく道も、どちらにも価値があります。
先代社長から「東海バネの外でも通用する人間になれ」と教えられてきました。インターネットで情報を得ることも重要ですが、外に出て人と会い、顔を合わせて話すことに大きな意味を感じます。
会社や学校といった「箱」にとらわれず、やりたいことを見つけ、スキルや人間力を養う。そのために欠かせないのが経験です。良くも悪くも過去の積み重ねが人を作ります。多様な出会いと経験ができるミラプロという場が、誰かにとっての転機になることを願っています。そして僕自身も、これからの経験を糧にしながら、どこでも通用する人間であり続けたいと思います。
