経営者を増やして社会に貢献

――事業の目的は？

志高い人格者を育てて社会に貢献することです。

若者向けにキャリア教育を行うNPO法人でのインターン時代、企業と協働で行う授業に携わりました。その中で、一人の内気な女子中学生が「演劇」という夢を見つけ、受験を希望する全ての高校に自ら連絡し、演劇部の有無を確認するという行動に出たんです。寡黙な彼女が変わっていく姿を目の当たりにし「人を成長させる仕事をする」と決めました。

「志が行動・習慣を変え、習慣が人格を変える。そして人格が運命を変える」という言葉があります。志ある若者に考え方と行動を示し、「人」として育てる。それができる人も会社も多くありませんが、だからこそ増やしていきたいです。「人としての正しさ」を判断の軸とする経営者的な人材を数多く輩出したいと思っています。

会社経営以上の学びはない

――目的を果たすための方法は？

人間にとって不可欠な衣食住や教育、環境にアプローチする事業として、トランクルーム「収納ピット」の貸出サービスを展開しています。具体的には、事務所ビルをパーテーションで仕切り、お客様に収納スペースとして提供することで、一般消費者や事業者の住環境の改善に貢献しています。『すぐ使わない、荷物になるモノ』や『思い出のモノ』を収納されるために利用される方が多いですね。

私たちがその事業を選んでいるのには明確な理由があります。情熱を注ぎ込めること、利益率が高いこと、市場でナンバーワンになれること。この3つの軸が重なり合う領域にあるからです。

高収益であることは、事業を社員の成長を結びつけるために欠かせません。安定した収益が見込めるストックビジネスのメリットは、失敗を許容できるところにあります。利益が少なくて経営的にゆとりがないと、チャレンジングな意思決定をしづらくなるのです。

従業員数が70名ほどの企業に成長してきた今、注力しているのが幹部教育です。月に1度は必ず社員との面談や食事会を行っている理由は主に3つ。考え方や哲学の理解の促進、社員のキャリアパス構築のサポート、そして自身が裸の王様にならないための傾聴です。

人間にとって、会社を経営すること以上に成長できる機会はありません。一歩間違えば会社を潰してしまう瀬戸際に立たされて胃がキリキリする経験や、一生消えないような十字架を背負う経験を積んでこそ、人間として一皮も二皮もむけ、すばらしい経営者に近づけるのだと思います。そのためにも失敗するチャンスを与えることは大切なのです。

100人の社長＆売上1000億円の企業を

――実現したいミライは？

日本を代表するリーダーや経営者を一人でも多く輩出することです。社会により大きな影響を与えるには、より多くの社員を、より大きく育てなくてはなりません。そのためにも、社の理念や考え方を私と同様に深く理解し、みんなが自身の強みを生かして働く姿を実現していきたいです。

現在は、業界のリーディングカンパニーを目指して、今後3倍ほどの市場規模まで成長しうるトランクルーム事業を強化している段階です。その先には、新規事業の創出も視野に入れています。人間にとって必要不可欠なサービスであり、業界ナンバーワンになれる、高利益率を出せる、という三つの条件を兼ね備えていれば事業内容は何でも構いません。成長市場の見極めが、戦略の一丁目一番地だと位置づけています。

15〜20年先に叶えたい目標が、「100人の社長を輩出し、合計で売上1000億円の企業をつくること」です。よきリーダーがいれば、その組織は健全になりますし、そこで働く社員も成長できて、社会に貢献できる可能性も高まります。1人の天才を1000人が支える組織は、持続可能ではありません。

トランクルーム事業の成長は欠かせないプロセスですが、「急速な」成長を望んでいるわけではありません。会社経営では、成長させるよりも潰さないことを重視すべきです。会社は一度コケて後退局面に入ると、元に戻すのに少なくとも4年は必要です。ゴーイングコンサーンを得るためにも、自分たちの実力に見合った成長スピードを維持する手堅さは大切だと考えています。ただ、当社では売上高前年比30%の成長を目指していますが、それでも15年続けば売上高1000億円に届くのです。

社会貢献のインパクトを最大化するためには、「未来の経営者」をエンパワーメントすることがもっとも効果的だと考えています。もちろん私自身もそれに値する人間にならなければならないので、「感謝・素直・謙虚」の心を常に忘れないようにしています。