可能性の窓を大きく開いて。自分の中の「はじまりのエネルギー」を呼び覚ます~「働く」を考える パーパスデザイン&ライフ株式会社 黄 韵奇さん

ミライ企業プロジェクトの理事を務めています、黄 韵奇です。組織開発のコンサルティングの仕事やミラプロの活動などで日々、さまざまな人と接しています。

なかには「何となく好きなことはあっても、自分の強みがどこにあるのか、将来の仕事につながるのかもわからない」と、就職活動やキャリアについて曖昧な気持ちを抱いている人もいます。

でも「気づくと時間を使っていること」「なぜか放っておけないこと」など、自分の中に自然に立ち上がってくる「はじまりのエネルギー」を誰もが持っている。そう、僕は強く感じています。

はじまりのエネルギーは、その人らしい生き方や働き方の後押しをしてくれる、とても重要なものなんです。はじまりのエネルギーや、僕がそれに気づくまでのプロセスについてお話ししたいと思います。

「構造とリズム」への気づき。人と組織がかみ合い、機能するために

以前の僕は、「合理的な選択をすれば成功する」、「人はロジックで動く」という考えで働いていました。

インターンシップでウェブデザインの仕事のおもしろさを知ったことから大学院を中退し、仲間とともに起業しました。その後しばらくして、新しい道に進むことを決意します。志が同じ6人でヘルステック領域の会社を立ち上げました。

急成長する会社で尽力する僕の中には、「理論的に正しいことをしていれば事業は伸び、人もついてくる」という信念や、自分のやり方を貫こうとする面がありました。

しかし現実を見つめ直してみると、人も組織もロジックでは動かないことに気がつきました。

相手の状態や場の空気、関係性の流れを無視すると、組織はうまく機能しません。一方で、場が整っていて、開いた関係性があれば、仮に言葉が足りないとしても、物事が自然に進むことがあります。

そこで心理学や瞑想、コミュニケーション、コーチングなどを学び、自分のあり方を考えるようになりました。例えば、会議にチェックインの時間を取り入れてみると、同僚と開いた関係性を築くことができ、社内の雰囲気も良くなっていきました。

その過程で自覚したのは、見えている物事の背景に流れている「構造やリズム」に、僕の関心が向いているということです。

迷いはありましたが、当時の会社を退職することを決め、今に至ります。現在は組織開発のコンサルタントを務め、さまざまなプロジェクトに関わっています。「何を変えれば、人やチームは自然に前へ進み始めるのか」「誰か一人の責任と考えるのではなく、チーム内のかみ合っていない部分はどこか」を考える日々です。

目の前の課題を解決するというよりは、人や組織に流れているエネルギーを見つけて、組織を機能させたいという思いで、仕事に向き合っています。

人・組織・プロジェクトを多角的に捉える。物事が機能するための3つのリズム

僕は普段から、人や組織、プロジェクトを、次の3つのリズムで捉えるようにしています。

1.「ヒトのリズム」感情、体調、関係性、成長のペース、その人らしい呼吸や間
2.「コトのリズム」仕事、役割、プロジェクト、実務の進行、成果を生み出す動き
3.「テンのリズム」時代の流れ、社会の変化、組織の歴史、その場にすでに流れている大きな前提

多くの人は、一番わかりやすい「コトのリズム」にフォーカスし、安心を得ようとします。一方で、「ヒトのリズム」と「テンのリズム」に目を向けることも大切です。

事業計画を最優先して、人を部品のように見てしまうと、「コトのリズム」だけで仕事が進んでいきます。「ヒトのリズム」に配慮するには、働く人がやりがいのある仕事をでき、何か事情があるときには休みやすい環境をつくることが必要です。

また、会社の創業経緯や沿革、先祖からの流れ、AIやテクノロジーの進展のような社会の流れといった「テンのリズム」への意識も忘れてはいけません。

3つのバランスを調整することにより、事業や組織運営、人間関係がうまく機能し、前進する流れが生まれると考えています。

「できない」は弱みではなく、チームの誰かの出番。「過剰性」を活かし支え合う

就職活動を前にすると「やりたいことを明確にしましょう」と言われる機会も増えますが、実際は明確な目標のある人のほうが珍しいと思います。やりたいことを、いきなり決めようとする前に、まずは自分から勝手に溢れ出てしまう強み「過剰性」にフォーカスしてみてください。

過剰性とはエネルギーの源泉であり、意識を向けることで活性化していきます。具体的には、「整理整頓が苦にならない」、「調べものに何時間でも集中できる」、「たこ焼きを焼くのが得意で、人と話しながらでも自然と手が動く」など、自分にとっては当たり前のことや、努力しているつもりがないものも含まれます。

そして過剰性を見つけると同時に、「ポンコツ領域」も探してほしい。「たこ焼きを焼くのは好きだけど、食材の準備は苦手」、「キッチンカーの運転はできない」など、苦手なことやできないことを明確にしましょう。

「ポンコツ領域」を、弱みとして抱え苦しむよりも、自分の過剰性が自然に機能するよう、チームに関わってみる。弱みはチームとの接続点であり、あなたが「できない」領域は、チームの誰かの過剰性が活きる領域なんです。そういうめぐりのある社会を、僕はつくりたいと思っています。

他者との出会いの中で見つける過剰性。キーワードは「漏らして、フィードバックをもらう」

過剰性は自覚しにくい場合があるため、自分の過剰性を他人に「漏らし」、いろいろな人から「フィードバック」をもらうことを、大事にしています。そのとき、大学の友だちや家族などの身近な人に伝えるだけでは、同じようなフィードバックしか得られません。

「ジョハリの窓」に照らし合わせてみると、天職を見つけようとする学生のみなさんが注目すべきは「未知の窓」です。

・「開放の窓」自分も、相手もよく知っている自己
・「秘密の窓」自分は知っているが、相手には知られていない自己
・「盲点の窓」相手はよく知っているが、自分には分からない自己
・「未知の窓」自分も相手も知らない自己

未知の窓を開くには、「自分がちょっと気になっていること」「もう一回やってみたいこと」などをさらけだし、普段は関わらない人の視点にも触れてみることです。

社会人や海外の人など、年齢も価値観も異なる人からフィードバックをもらい、大学だけではできない経験をする。「きみのその部分、すごく興味深いね。こうしてみたら、すごく役に立つよ」といったフィードバックをもらえる機会が生まれ、急に未知の窓が開くことがあります。

まさに、他大学の学生や経営者、社会人と一緒にプロジェクトを実践するミラプロは、自分の過剰性に気づくための場にピッタリだと思います。

誰もがはじまりのエネルギーを持っている

「自分には、はじまりのエネルギーがない」と思う人もいるかもしれませんが、はじまりのエネルギーは誰にでもあります。学生のみなさんも、朝起きて寝るまでの間に、ちょっとした嬉しい経験を必ずしているはずです。

「朝日がきれいだった」「コーヒーがいい香りだった」「ゲームをクリアできた」、そんな小さな喜びの瞬間が全部、自分のはじまりのエネルギーにつながっています。

崇高なことをやろうとしなくても、いかに今日一日を平和に美しく生きるか、日常の小さなことに目を向けることが大切だと思っています。

そして、幼少期の楽しかった記憶を思い出してみてください。僕は、子どものころ砂遊びに夢中になって、幼稚園を休んだことがありました。大人になったある日、仲間と本気の砂遊びをしてみると、もう楽しくて!

年齢を重ねた大人たちが、ああだこうだ言いながらでっかい砂の城を作っていました。それを見て、「この場でのみんなとの関わりが、好きだなあ」と、大事な感覚に気づきました。

はじまりのエネルギーに意識を向けながら経験を積み、他者からフィードバックをもらって、また行動してみることを繰り返します。そうやって、自分の生き方や働き方を立ち上げていく人が増えることを願っています。

はじまりのエネルギーは焚き火みたいなものです。誰の中にも、消えることのない種火は絶対にあります。忘れたとしても、種火に意識を向けて、思い出せばいい。薪をくべて火をどんどん大きくしていけば、誰にも止められない炎になるはずです。

Writer

アバター画像

ミライ企業プロジェクト事務局

ミライ企業プロジェクト(略して「ミラプロ」)とは、若者と中小企業のミライが共に広がるプラットフォームを創るプロジェクトです。

このライターの記事一覧

Top