「社員第一主義」を経営理念に
――事業の目的は?
病院や福祉施設、学校などのカーテンのクリーニングや修理、それにともなう交換作業まで含めたサービスを提供しています。一般的なクリーニング店のようにお客様に持ち込んでいただくのではなく、お客様のところへ交換に行き、自社一貫で対応しています。創業当時より、大手のリネンサプライヤーから手間のかかるカーテンなどの付帯アイテムのクリーニングを外注していただく契約形態が中心となっています。
もとはカーテンメーカーに勤めていた父が、1998年に会社を立ち上げました。父が65歳になったとき、家族会議で相談されたのが、「会社を畳むか、社内の誰かに継承するか」ということです。「経営にチャレンジしてみたい」、そう考えた私が引き継ぐことを決めました。2年半の下積みを経て2019年4月に社長に就任。当時は組織内の課題もあり、今後の経営に不安を感じていたんです。そのころ参加した研修で、「売上や利益はあくまで手段。社員や社員の家族、お客様、そして地域社会を幸せにしていくことが会社の使命なんだ」と学ばせていただきました。
また、社長に就任してすぐコロナ禍に入り、目の前の仕事が突然なくなってしまいました。緊急事態宣言下では取引先の建物の中に入ることさえできず、仕事が完全にストップしてしまったんです。仕事をもらうことが当たり前のようになっていて、自分たちで開拓していく力がなかったことを痛感しましたね。
会社を持続するためにリストラも頭をよぎりましたが、やはり社員に責任を負わせるのは違うと思って。売上や利益に関係なく、社員のモチベーションを高めるためにはどうすれば良いのかを、社員と話し合いながら進めていきました。その後2年ほどで赤字を脱却し、3年目には業績も復活させることができました。
現在は「社員第一主義」を経営理念としています。社員が幸せだからこそ、お客様や地域社会も幸せにできる。この考えを、2024年から経営理念として掲げ、事業の目的としています。
社員が自分たちで考え、行動するように
――目的を果たすための方法は?
コロナ禍で目の前に仕事がない期間を経験したことで、「今、何ができるのか」「どうすればこの先、お客様のお役に立ち、幸せに働き続けることができるか」を、私だけでなく社員も考えるようになりました。日常業務をこなしているだけでは考えることもなかったでしょうし、仕事が止まったからこそ得られた良い機会だったと思います。その経験があったことで、社員が自分たちで考え実行していけるようになってきました。
私自身も何が大切かを心に強く落とし込み、社内に共有しました。社員はそれをもとに、何ができるかを考えながら行動していくというかたちが、少しずつ実現してきているように思います。現在は月に1回、社員全員で意見交換をする会議の日を設定し、理念の浸透を図っています。

社員全員が同じ思いで、明るい未来をつくっていきたい
――実現したいミライは?
お客様のお困りごとやご要望に対して、できる限り全員が同じ思いで取り組みたいと考えています。カーテン以外のクリーニングのご要望にも、社外と協力して対応できる体制をつくるなど、社員全員でアプローチしていきたいです。
また、「現状が当たり前じゃない」ということを心に留め、社員には働くことで得られる幸せを感じてもらいたいですね。目に見える喜びだけではなく、働きがいや働きやすさといった目には見えない幸せをもっと高めていきながら、社員に今よりも幸せを感じてもらいたい。そしてお客様や地域社会に、その幸せを振り分けていけるような未来をつくっていきたいと考えています。
10年後が思い描いている通りになるかは分かりませんが、明るい未来になると思っています。大変なことも含めて、成長する10年になると信じています。嬉しいのは、私一人ではなく社員も同じように考えてくれていることです。大きな困難があったときに、一枚岩になるのか、バラバラになってしまうのか、社員がどれだけ信じてくれるかどうかが一番大きいと思うんです。
以前、会社が大きな窮地に立った時期に、社員数名から「なぜ経緯をもっと詳しく話してくれなかったのか」「これからどうするつもりなのか」と正直な想いを伝えられたことがあったんです。そこでしっかり向き合い、深く対話したことで、「これから先もついていきたい」と社員たちも納得してくれて。 社員と戦略を練り、カーテンのクリーニング以外の新たな事業を展開していくプランも考えました。結果、私が社長就任後の最高利益を達成することができたんです。社員と一致団結したからこその成果だと思っています。
経営者は孤独な立ち位置という側面もあるため、社員にはとても感謝しています。だからこそ、社員のために尽くしていきたいし、こうして自信を持って未来を語れるんだと思います。

