「漏れ」の解決は、サステナブルに直結する
――事業の目的は?
経済や地球環境が後退局面にあるとされる中で、持続可能な社会に貢献する事業を通じて、「Mottainai(もったいない)」文化を伝播することです。さらに掘り下げると、その事業を手段として、若者を育て、次世代のイノベーターとなる経営者やマーケッターを育てることが目的です。
当社は、自動車やエアコン、機械などあらゆる産業における、オイル、エア、冷媒ガス、水などのさまざまなリーク(漏れ)の解決を事業の目的としています。具体的には、漏れの検知・防止・対策に役立つさまざまな製品の輸入販売、コンサルティング営業を行っています。
分野を問わず「漏れる」ことは「もったいない」ことです。例えばエア漏れは、日本の総電力のなんと約3%ものロスを生み出しています。「漏れ」の解決は、企業の電気コストの無駄を削減し、石油や天然ガスといった化石燃料の使用を低減できるなど、サステナブルな社会づくりに大きく貢献できる事業として大きな可能性を秘めているのです。

“ちゃんともうかる”企業であり続ける
――目的を果たすための方法は?
近年の大きなトピックは、エア漏れ診断サービスを立ち上げたことです。エア漏れを計測し、対策することで、顧客(工場)は省エネと電気代削減を実現できるので、コスト削減に直結します。当然CO2を削減し、温暖化抑制にも寄与します。お客様が儲かり、当社が儲かり、地球も儲かる三方善しの素晴らしい事業です。この事業は高い収益性があるのですが、どうしてもマンパワーが必要になる労働集約型なので、今年中には専門の部隊を立ち上げます。
また、「会社の成長=従業員の成長」を信条に、思い切った投資を実施。みんなが誰のせいにもしない、汗や涙を流しながら懸命に努力する強豪校のようなチームを形成し、目的・目標に向かって生産性の高い仕事をするための仕組みを導入します。具体的には、仕事の役割や意義、責任、給与を明確にして、個々が自主自律の精神を持つチームをつくり、会社の成長スピードをぐんと速めていきます。

その手段を通して実現したいのが、持続可能な社会を支える「三方善し」のビジネスを遂行できる強いチームをつくることです。当社では、就業前にフィロソフィーを輪読する「朝活」や月刊誌『致知』を読み、月に一度、その感想を発表し合う社内勉強会(木鶏会)のほか、自発的な委員会活動、合宿、社員旅行などを通じて、個々の人間性を育てています。「勉強しろ」と言われても勉強する気が起きないと思うので、従業員が「勉強しないといけない」と自分で気づくような働きかけを大切にしています。愚痴をこぼしたり、人のせいにしたり、嫌なことを我慢したりしながら働く状況をなくしたいのです。
ただ、どんなに美辞麗句を並べても、まずはもうからないと意味がありません。CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)という概念がありますが、大切なのは、社会的に意義のある仕事を、慈善事業ではなくビジネスとして本気で取り組み、“ちゃんともうかる”企業であり続けること。既存の事業からどんどん飛び出し、巣立っていくようなイメージで、若い人たちが自分の個性を最大限に発揮して事業を立ち上げるための舞台を用意していきます。
ミニインキュベーションセンターのような場づくりを
――実現したいミライは?
「スローライフでハイパービジネス(三方善しの高収益事業)」と提唱しています。少し前に縁ができた奈良県明日香村は自然の恵みを感じられるすばらしい土地で、いつしか社員とともに「ここに“ムラ”をつくりたい」と思うようになりました。
“ムラ”とは、安心、安全の基盤となる共同体の象徴です。3世代が同居し、祖父母や地域社会が子どもの面倒を見ていた昔の村のように社員が助け合い、子育ても介護もまるごと引き受けたり、田畑も運営したりしながらでも、キャリアアップができる。そして、自然や四季と調和した豊かな生活を送りながらも、豊かさが実感できる収入を得られる。そんなコミュニティを意味しています。
そのビジョンを具現化するために、昨年、奈良県の生駒市に土地を購入し、社屋を建てているところです(2022年12月末完成予定)。家賃の安いエリアでの職住近接を実現し、可処分所得を増やすこと。社員食堂で四季を感じられる健康的な食事を楽しめること。地域の畑や田んぼを借りたりして、まちづくりにも貢献すること……。そういった物心両面の豊かさや幸福感を享受できる場にする予定です。貿易業務が多い当社は国際色が豊かなので、彼ら外国人と地元の人たちがどういう化学反応を生むのかも楽しみです。
人が自然に戻れる場所で行う経営研究会を通じて、サステナブルで高収益なビジネスを創り出す若者を輩出する“ミニインキュベーションセンター”のような場づくりが私の夢の一つです。
事業の切り口がとても斬新なうえに、環境問題を解決したい、全従業員がイキイキと働く会社をつくりたいという強い想いをお持ちです。非常に勉強熱心な物部さんとお会いした際は、互いの質疑応答が止まりません。経営ビジョンと物部さんの貪欲さが、リークラボ・ジャパンをさらなる高みへと連れて行くのだろうと感じています。
先を見ている経営者は、学校などの学びの場をつくることを目指している人が多く、物部さんもその一人です。さまざまな国籍の社員と、社会課題をビジネスで解決する経営者仲間、起業を志向する若者が混じり合うことで、面白いものが生まれる予感がします。しかも自然の恵みを感じられる場所で、スローライフも楽しみながら…。どんな学び舎、ムラができるのか注目しています。